山下達郎/クリスマスイブを解説してみた



クリスマスのイラスト

今年もあと1か月を切りました。12月にもなると、否が応でも「今年もこの季節だねー」となります。

それはクリスマスです。
もうクリスマス云々という歳でもないし、実際特に想うところもないけど、個人的には雰囲気自体は寒いの以外嫌いではありません、昔からね。

そのクリスマス時期が近付くとクリスマスソングが巷やテレビで散々掛かります。我が国を代表するクリスマスソングと言えば、「山下達郎のクリスマス・イブ」は定番です。いろんな意見があるでしょうが、ランキング作ると、上位は間違いない。

クリスマスという、西洋の文化的・宗教的儀礼イベントを象徴する曲が、日本人が日本語で歌っている曲がこれだけ支持されるのも誇らしいが、奇妙な感じがするといえばします。

ただ、それだけのクオリティーを持った曲だと思うし、それは多くの日本人が思うところだと感じていますけど。

そんな山下達郎さんの代表曲である「クリスマス・イブ」ですが、色々解説してみたいと思います。たぶん、みなさんも知らないことがあると思いますので、うんちくとしても使えると思いますよ?

「山下達郎/クリスマス・イブ」とはどんな曲?

「クリスマス・イブ」は、山下達郎の1983年に発売されたアルバム「MELODIES」に収録されている曲で、作詞・作曲・編曲、すべて山下達郎さんです。

もう36年前の曲なんですね。

もともとは他人に書いた曲

もともとは、奥さんの竹内まりやさんのために作った曲だそうで、それが、まりやさんの当時のディレクターにボツられたんだそうです。

この段階では曲だけだったから、もし、まりやさんの曲としてレコーディングしてたとしたら、クリスマスの曲にはならなかった可能性は高いでしょうね。

で、じゃあしょうがないから自分の曲としてレコーディングしようか、ことになったとか。

発表当時は「地味な曲」

発売当時は、シングルとして切るわけでもなく、アルバム最後に収録された、ご本人曰く「どちらかというと地味な曲」ということでした。

たしかに、当時の達郎さんは、「夏だ!海だ!タツローだ!」と夏のリゾートミュージックの担い手として扱われた面もありましたので、「あの達郎がクリスマスソング?」というところもあったでしょう。実際、この頃は特に世間に支持されるでもなく、ファンの中だけで支持されていた、ほかにもある山下達郎の曲と同じような立ち位置だったそうです。

季節がら、ピクチャーレコードとかにして発売はしていたそうなんですけどね。

もちろん、この頃の山下達郎さんが人気がなかったというわけではなく、1980年の「RIDE ON TIME」の大ヒット以来、メディアには出ないけど、世間の認知度も抜群で、大きな支持は集めていた時期です。

そんな「クリスマス・イブ」を取り巻く状況が、発表後から5年経って一変します。

JR東海のCMに起用

この「クリスマス・イブ」、JR東海のCMに起用されました。

1988年当時、JR東海は「クリスマス・エクスプレス」というキャンペーンを張っていましたが、ここに採用された曲が、この「山下達郎/クリスマス・イブ」でした。

なんでも、古今東西のクリスマス・ソングが300曲ほど挙げられ、そこから選ばれた曲がこの曲だとか。なんでも、この曲ありきでCM制作されたとのことで、制作側のかなり強いこだわりがあったのだそうです。

一定の年齢の方なら、このCMの衝撃は覚えておられるでしょう。まさに、曲と映像の相乗効果ということなのでしょうかね、ホント、誰が観ても素敵なCMと感じる、素晴らしいCMです。

このシリーズは何年か続きました。個人的には牧瀬里穂さんの時のが最も印象深いですね。

6年目のナンバー1

世間一般に見つかっちゃったということで、このCMをきっかけに「クリスマス・イブ」の認知度は爆発的に上がります。

そして、1989年12月、1983年6月の発表から6年6か月後に、オリコンシングルチャートでナンバー1を記録します。この記録は、発売から1位獲得までの最長記録として、それまでの欧陽菲菲の「ラブ・イズ・オーヴァー」の記録を更新しました(当時)。

そこから今年で、30年です。山下達郎さんのクリスマス・イブは、毎年のようにこの時期になるとチャートインしてきます。

ギネスにも認定

2015年時点で、30年連続トップ100にチャートインしており、この記録は2016年にギネス認定されています。累計の売り上げ枚数は、2016年時点で190万枚を記録しており、80年代に発売された曲としては最多販売枚数だとか。200万枚超えまでそう時間はかからないでしょうね。

冒頭でお話しした通り、この曲は、日本におけるクリスマスソングのスタンダードになりました。もともとはいちアーティストの一曲にすぎなかったものが、本人の意図の存せぬところでとてつもないことになった好例です。

ご本人もそんなようなことを言っていましたが、それもこれも、この曲がそれだけのポテンシャルを持っていたからこその事象です。実際、ご本人もこの曲の出来は自作曲の中でもトップクラスのものだそうです。

曲そのものを解説してみました

では、その「クリスマス・イブ」ですが、曲そのものについてスポットを当ててみたいと思います。

この曲がクリスマスソングになった理由とは

先ほども言いましたが、当初はメロディーしかできておらず、クリスマスの曲にしようかとかは決まっていませんでした。では、なぜクリスマスがテーマになったのでしょうか?

この曲、コード進行がクラシックのバロック音楽にありがちなそれでした。初めから意図したものなのか結果的にそうなってしまったのかは定かではありませんが、クラシックのコード進行に沿った曲なのです。

だから、歌詞はクリスマスものにしようということになります。案外安易に決まったんですね。山下達郎さんはこういうことが少なくなく、タイプ的には、伝えたいことがあって歌詞を書くというのはあまり多くはありません。どちらかというと、このクリスマスイブ的な感じの方が多いようですね。

そこはやはり、「芸術家的」ではなく「職人的」ということなのでしょう。ご本人もアーティストと呼ばれることはあまり好きではないようですし、「アルチザン(職人)」というタイトルのアルバムを出すくらいですし。

で、アレンジですが、ここで、この曲のキモとなるべき2つのキーワードが関係してきます。その2つのキーワードとは…

「ひとりアカペラ」と「カノン」

この「クリスマス・イブ」を説明するに当たって外せないキーワードとは、「ひとりアカペラ」と「カノン」です。

「ひとりアカペラ」とは

この「ひとりアカペラ」と言い方が正しいのかどうかはわかりませんが、要は、自分の声をいくつも重ねてしまう手法。

これは、山下達郎さんが大得意としているところであり、ソロになってから暫くして始めた、彼の代名詞であり、タツローサウンドの大きな特徴でもあります。

この「クリスマス・イブ」でも、自分でアレンジしていくつもの自分の声を重ねて多重録音しています。

ボーカルの後でのコーラスや間奏は、全て山下達郎さんです。どのくらいの声が重なっているのかわかりませんね(笑)。

カノン

2つ目のキーワードの「カノン」とは曲名です。パッヘルベルのカノン。バロック音楽の超名曲です。

誰もが聴いたことのあるクラシック音楽ですが、「クリスマス・イブ」の間奏に、まんま、このカノンを持ってきてしまったのです。

しかも、「ひとりアカペラ」で。

理由は、先のクリスマスの歌詞にした理由とほぼ同じです。

この「クリスマス・イブ」、まんまではありませんが、このパッヘルベルのカノンとコード進行が似ています。日本には「カノン進行」という言い方がありまして、ある種、ヒット曲の法則というものがあるんです。カノン進行って?

当時からカノン進行の法則の話があったかどうかはわかりませんが、達郎さんもカノンに似ているということは当然わかっており、だからこそクリスマスの曲にしたわけで、だからこそ、「じゃあ、間奏もカノンにしちゃおう」ということになったわけですね。

「ひとりアカペラ」は曲全体の印象に大きく寄与しているわけですが、そこに間奏になって「カノン」というキーワードが持ち込まれました。

そして、この間奏は、この曲の最も印象的な部分であり、最大の見せ場です。これがなかったら、この曲の魅力は半減するに違いありません。

やはり、ここは、山下達郎さんのプロデュース能力とアレンジ能力に感服するしかありません。

ご本人が当初抱いた「地味な曲」というのは、当時の他の曲と比べてという意味であり、テーマ的に異質な曲という意味だからということなのでしょう。

しかし、実際は、自分が納得できる仕事ができた満足いく仕事だったわけであり、曲自体も他の達郎さんの曲同様、非常に凝った、彼でないとできない仕事だったのだと思います。

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